2024年の法改正に対応!「裁量労働制」の変更点には企業が迫られる対応が山積み
裁量労働制は労働者が業務の時間配分を決められる、自由度の高い働き方のひとつです。企業・労働者双方にメリットがある反面、時間数や時間帯が不明瞭になりやすく、労働者の健康的な労働の妨げになりがちなこと、裁量労働にあてはまらない業務に不適切に適用されていたことなどがあり、今回の規則改正となりました。
本改正では、新規に裁量労働制を導入する企業だけでなく、23年度までに既に裁量労働制を採用していた場合も、改正点に則り運用を変更しなければなりません。ここでは、改めて裁量労働制の基礎を押さえるとともに、改正のポイントと、企業が対応しなければならない事項について、詳しく解説していきます。
目次
裁量労働制とは?
まずは「裁量労働制」とはどのようなものか、基礎を押さえておきましょう。
・裁量労働制とは?
「裁量労働制」とは、年俸制や月給・日給制などと同様、働き方・勤務形態のひとつです。
業務に対する時間配分を労働者自身の裁量で決められ、成果があげられるならば勤務時間帯に縛りはないという特徴があります。企業は労働者の能力によって業務を任せられるので、企業と労働者の双方にメリットがあるといえます。
・裁量労働制は2種類ある
裁量労働制には「専門業務型裁量労働制(専門型)」と「企画業務型裁量労働制(企画型)」の2種類があります。名称の通り専門職に適用できるのが「専門型」、経営や企画管理といった、いわゆるホワイトカラー職種に適用できるのが「企画型」と分けられていれます。
・適用には制限がある
裁量労働制はどのような業種・業務にでも適用できるものではありません。導入できる業種に制限が設けられている点には注意しましょう。
裁量労働制では、企業と労働者の間で「労使協定」を締結し、労働者が行う業務に必要な時間を大枠として定めます。その時間を超過しないようにするのも労働者の裁量の内なので、超えてしまった場合も残業代は支払われません。そのため、裁量労働制は適用できる職種が限定されているのです。
裁量労働制改正の背景
裁量労働制は 、企業にも労働者にもメリットの多い働き方ですが、勤務時間帯に明確な縛りがないことで、長時間労働や深夜労働に陥りやすいというデメリットもありました。
・労働者のデメリット
労働者にどれだけの負荷がかかっているのか企業が把握しにくいので、健康確保やモチベーション維持に問題があります。また、ひとつの業務に手間がどれだけかかっているのかが不透明で工数管理が曖昧になり業務効率化しにくいといった、不安要素も抱えていました。
・企業側の問題
運用上も、裁量労働制が適用できる職種には制限があるにもかかわらず、適用職種ではない業務に従事している労働者にも適用するというケースが発生していました。裁量労働制の「業務時間に縛りがない」という部分のみを利用したもので、不適切な運用と言わざるを得ません。こういったケースでは、長時間・深夜労働の管理不行き届きや、本来なら支払われなければならない残業代が未支給にされるといった問題が起こりました。
これらの実情・問題点を踏まえ、長時間労働の改善とより柔軟な働き方の実現に向けて労働基準法施行規則が見直された、というのが本改正の背景です。
裁量労働制の具体的な変更点と対応のポイント
裁量労働制には2つの型があることは先に述べました。今回の法改正ではどちらの型にも改正点がありますので、それぞれ見ていきましょう。
専門業務型裁量労働制(専門型)の変更点
・対象業務の追加
裁量労働制ができる業種が1種類増加し、20業種となりました。追加となった業種は、「M&Aアドバイザー」で、いわゆる企業統合といった際のコンサル業務です。M&Aアドバイザーを雇用する際には、裁量労働制で契約することが可能になりました。
【裁量労働制を適用できる専門型裁量労働制の20業種】
20種となった業種は以下の通りで、今回追加されたのは(13)です。
(1)新商品もしくは新技術の研究開発または人文科学もしくは自然科学に関する研究の業務
(2)情報処理システムの分析または設計の業務(情報処理システムとは、電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であって、プログラムの設計の基本となるもの。(7)においても同じ)
(3)新聞もしくは出版の事業における記事の取材もしくは編集の業務、または放送法(※)に規定する放送番組の制作のための取材もしくは編集の業務
※放送法:昭和25年法律第132号の第2条第28号
(4)デザイナー業務。衣服、室内装飾、工業製品、広告などの新たなデザインの考案)
(5)放送番組・映画などの制作プロデューサーまたはディレクターの業務
(6)いわゆるコピーライターの業務。広告・宣伝などにおける商品などの内容や特長等に係る文章考案の業務
(7)いわゆるシステムコンサルタントの業務。事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握またはそれを活用するための方法に関する考案もしくは助言の業務
(8)いわゆるインテリアコーディネーターの業務。建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現または助言の業務
(9)ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
(10)いわゆる証券アナリストの業務。有価証券市場における相場等の動向または有価証券の価値等の分析、評価またはこれにもとづく投資に関する助言の業務
(11)金融工学などの知識を用いて行う金融商品の開発の業務
(12) 学校教育法(※)に規定する大学における教授研究の業務。基本的に研究に従事するものに限る。
※学校教育法:昭和22年法律第26号
(13)いわゆるM&Aアドバイザーの業務。銀行または証券会社における顧客の合併および買収に関する調査または分析およびこれにもとづく合併および買収に関する考案および助言の業務
(14)公認会計士の業務
(15)弁護士の業務
(16)建築士(一級建築士、二級建築士および木造建築士)の業務
(17)不動産鑑定士の業務
(18)弁理士の業務
(19)税理士の業務
(20)中小企業診断士の業務
【参照】 厚生労働省:「専門業務型裁量労働制」をもとに作成
企画業務型裁量労働制(企画型)の変更点
・賃金や評価制度の説明義務
企画型の変更点としては、企業から裁量労働制で働く対象者へ、賃金や評価制度についての「説明義務」が課せられることになりました。説明する項目については、あらかじめ社内で運営規程に定める必要もあります。
また、運営規程の変更を踏まえ、労使協定の決議項目も変更しなければなりません。つまり、企画型裁量労働制の労使協定で定めなければいけない項目が加増したことになります。
裁量労働制改正への対応のポイント
裁量労働制の改正は、4月1日から適用が開始されています。以下の2つのポイントを押さえた対応ができているかチェックしてみましょう。
・対応が必要な企業の範囲
ポイントの1つ目は、4月1日以降に裁量労働制を新規導入した企業だけでなく、これまでも裁量労働制を実施している継続の場合でも、本改正にもとづく対応が必須だという点です。継続実施のための対応をせず、従来通りの運用をしている企業は、すぐに改正点を見直し、運営規定の改正といった対応を実施してください。
・労使協定の締結
ポイントの2つ目は、裁量労働制を新規導入・継続するにあたっては、裁量労働制で働く労働者が「専門型」でも「企画型」でも、企業と労働者の間で労使協定を締結しなければならないことです。また、協定締結とともに、「本人の同意」を得る必要である点にも注意が必要です。
労使協定締結についてはさらに細かな要件がありますので、次の「注意点」で詳しく見ていきましょう。
裁量労働制に付随する労使協定の注意点
「専門型」でも「企画型」でも、裁量労働制で労働者を雇用する場合には、今回の改正に対応した「労使協定の締結」が必要であるとお伝えしました。ただ締結すればクリアできる、というわけではありません。裁量労働制を導入・継続する企業は、労使協定に付随して以下の手続きも踏む必要があるのです。
・労使協定締結と届け出
・本人の合意を得る
・健康・福祉確保措置の強化
労使協定を補完する形での「健康・福祉確保措置の強化」も必要となります。「健康・福祉確保措置」は、いわば裁量労働制が適用されている労働者が健康的に働き続けられるようにするためのメニューです。コンプライアンス遵守の法対応だけでなく、健康経営にもとづく社内体制の整備も並行して実施することが必要になったわけです。
なお、正社員や契約社員、派遣社員といった雇用形態にかかわらず、裁量労働制で働いている全従業員に対してこの対応が必須となります。例えば、裁量労働制で派遣社員を雇用することも可能ですが、個々の派遣従業員に労使協定締結と付帯する措置強化が必須となるため、膨大な手続きが発生することになります。24年度の法改正のなかでも裁量労働制には事前準備が非常に多かった理由はこのためです。
「健康・福祉確保措置」の内容
裁量労働制のための労使協定に付帯する「健康・福祉確保措置」とは、具体的に以下の6項目となります。
・対象労働者の勤務状況や健康状態に応じて、代償休日または特別な休暇を付与する
・対象労働者の勤務状況や健康状態に応じて、健康診断を実施する
・働きすぎ防止のため、年次有給休暇について、連続してまとまった日数を取得することを含め、取得を促進する
・心とからだの健康問題についての相談窓口の設置
・対象労働者の勤務状況や健康状態への配慮として、必要な場合に応じて適切な部署への配置転換
・必要に応じて産業医などによる助言・指導を受ける。または、対象労働者に産業医などによる保健指導を受けさせて働き過ぎによる健康障がいを防止する
※対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、対象労働者への裁量労働制適用について必要な見直しを行うことを協定に含めることが望ましい。
【参照】厚生労働省「対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容」をもとに記載
管理システムで適正にマネジメントを!
裁量労働制で雇用できる従業員には派遣社員も含まれます。ただし、前述のように企業との間に労使協定の締結と、健康・福祉確保措置の強化が必須条件です。
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また、労使協定や法改正にも対応しているので、つぎつぎに実施される法改正にも慌てずに済みます。コンプライアンスを守りながら派遣従業員の適正活用をしたい企業には、とてもおすすめです。ぜひご検討ください。




